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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)8971号 判決 1979年1月25日

原告

右代表者

古井喜実

右訴訟代理人

青木康

右指定代理人

大喜多啓光

外六名

被告

三菱重工業株式会社

右代表者

古賀繁一

右訴訟代理人

仁科康

主文

1  被告は、原告に対し、金二億一一七五万九二四三円及びこれに対する昭和四七年九月一日から完済まで日歩金二銭四厘の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  主文と同旨

2  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  (本件請負契約の成立及び本件航空機の引渡)

原告は、昭和四二年六月五日、被告との間において、その所有するF―一〇四J/DJ航空機五機につき、被告が所定の仕様書に基づいて、機体定期修理等の作業を行ない、昭和四三年二月二九日までに右各航空機を原告に引渡し、原告がその役務の対価として被告に対し、金五八六九万五〇〇〇円を支払う旨の契約(以下「本件請負契約」という)を締結し、原告は、その頃、被告に対し、右各航空機を引渡した。

2  (本件事故の発生による本件請負契約の一部の履行不能)

ところが、前項記載の各航空機のうちの一機であるF―一〇四J五六―八六七八号機」(以下「本件航空機」という)は、昭和四二年一〇月二一日、被告の被用者である操縦士小林襄(以下「本件パイロツト」という)の操縦による整備試験飛行中(以下「本件試験飛行」という)、愛知県春日井市与八山八〇の二所在春日井市立農業試験場東側の田に墜落(以下「本件事故」という)して修理不能の程度に大破し、そのため、被告は、右航空機を所定の作業をしたうえ原告に引渡すことができなくなつた。

3  (本件事故の態様)

本件パイロツトは、同日午前一〇時四九分、本件航空機に搭乗して名古屋空港を離陸し、所定の飛行を終了して、同一一時一九分、滑走路南端から着陸すべく名古屋管制塔へ着陸誘導管制を要求し、そのまま着陸体勢に入つて進行中、同二六分頃、滑走路南端手前三マイルの地点において、同管制塔から、「左側へ離脱せよ。」との指示を受け、一旦、滑走路左側(西方)へ離脱した。そして、同パイロツトは、同二七分頃、滑走路北端から数マイル北西方の地点において、同管制塔に再度着陸を要求し、そのまま右方へおよそ三六〇度旋回して再び滑走路南端上空に達し、着陸誘導方式によらない通常の着陸方式による着陸体勢に入り、同二九分四〇秒、滑走路南端から北側へ四分の一滑走路上において管制塔と交信したうえ、滑走路中央上空において着陸のための旋回を右方へ開始した(以下「本件旋回」という)。その後、本件航空機は、同三〇分頃、約一八〇度旋回した地点において、失速し、地上に墜落したものである。<以下、事実省略>

理由

一請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

二抗弁1中、本件請負契約において、本件試験飛行中に本件航空機について損害を生じた場合には、被告において故意又は重大な過失があつたときに限り、その損害は被告の負担とする旨の合意のあつたことは当事者間に争いがないので、その事実の立証責任を原告の負担とする旨の合意があつたかどうかについて判断する。

<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。

1  (本件一般条項第二八条第三項の成立経緯)

(一)  被告は、昭和三一年、駐留米軍との間において、航空機修理に関する米軍契約を締結した。同契約は、飛行試験中の航空機に生じた損害の負担につき、契約条項第二七条(b)において、飛行試験等中の航空機に生じた損害は原則として合衆国政府が負担し、例外として、契約者又は政府の派遣又は承認した以外の者が航空機を作動させた場合、又は一定の権限を有する契約者の取締役等の代表者の悪意ある行為又は誠実の欠如によつて生じた場合は契約者の負担とする旨を定めていた。

(二)  原告は、昭和三二年、被告との間において、米軍契約を参考として、戦後最初の航空機修理に関する第一次修理契約を締結したが、飛行試験中の航空機に生じた損害の負担につき、同契約条項第二二条第一項において請負代金相当額はすべて原告の負担とする旨を定め、同条第二項において、当該航空機の損害部分を修補することができない場合はその損害の生じた地点において被告の給付の履行があつたものとみなし、また、修補可能な場合は原告が修補費用を負担する旨を定めた。

(三)(1)  原告と被告とは、昭和三三年、第二次修理契約を締結し、飛行試験中の航空機に生じた損害の負担につき、第一次修理契約条項第二二条に故意又は重大な過失条件を挿入するという修正を加えた。すなわち、第二次修理契約一般条項第一八条第一項は、飛行試験中において、被告の故意又は重大な過失以外の事由により航空機等に損害を生じたときは、当該航空機の修理に要した費用は、原告の負担とする旨を定め、同条第二項は、右航空機等が修補可能なときは原告が修補費用を負担する旨を定めた。

(2)  前項の故意又は重大な過失条件を挿入するについては、被告は当初強く反対し、仮に右条件を挿入するのであれば重大な過失について付保し、保険料相当額を請負代金原価に算入すべきことを求めた。しかしながら、原告が、そうした保険は例がなく、保険料算定も困難でその額も著しく高額となるであろうし、故意又は重大な過失により被告が損害を負担するようなことはまずないから、付保の必要もないと強く被告を説得したため、被告は同条を承認するに至つた。

(四)  飛行試験中の航空機に生じた損害の負担に関する第二次修理契約一般条項第一八条は、原告と被告との間におけるその後の航空機修理請負契約にも引き継がれ、本件一般条項第二八条第三項に至り、本件請負契約においても、飛行保険の保険料相当額は、請負代金原価に算入されなかつた。

2  (付保と損害負担の対応関係)

(一)(1)  原告が、航空機の製造、修理請負契約の原価計算につき準拠すべきものとして、昭和三一年一一月一日に専門家に依頼して作成した原価計算要領は、我が国の航空機工業が戦後再興の緒についたばかりであり、市場も形成されていないことに鑑み、適正な原価を把握して健全な航空機工業の育成を図るという立場に立つている。そして、原価計算については全額補償主義を採用し、請負人である当該企業の事業目的を達成するために善良な経営管理のもとに発生した費用は、すべて補償するものとしている。この原則に従つて、同要領第一八は、飛行保険、第三者賠償保険等の航空保険の保険料は、経費として、製造原価に算入すべき旨を定めている。

(2)  また、原告と被告との間の航空機製造、修理請負契約の請負代金は、前項の原価計算要領に準拠して算出された製造原価に利益算定要領に準拠して算出された適正利益を加算して決定される。したがつて、仮に保険料相当額が原価に算入されないで、被告が適正利益の中から高額の保険料を支出することによつて任意に付保するとすれば、その合理的な企業運営を阻害するという結果を生ずる。

(二)  第一次及び第二次修理契約においては、原告の指示により被告が付保し、契約上原告が損害を負担すべき場合においても、付保金額の範囲内の額については被告の負担とし、付保金額をこえる額について原告の負担となることと定めている。

(三)  (三六年製造契約における付保廃止と代替措置)

(1) 原告と被告との間における航空機製造請負契約においては、不可抗力及び被告の責に帰すべき事由に基づく製造不能の場合の費用又は損害並びに被告の責に帰すべき事由に基づく試験飛行中の事故により第三者に与えた損害の賠償は被告の負担とする一方、飛行試験における第三者賠償保険、地上保険、輸送保険を付すのが通例であつたところ、原告と被告との間において昭和三六年に締結された三六年製造契約は、右のうち、地上保険及び輸送保険を付することをやめ、その代替措置として、同条項第四九条第三項において、被告の故意又は重大な過失以外の理由により、エンジンと胴体の結合以降の工程に入つた航空機及び工場間を輸送中の航空機に損害を生じた場合は、その修補に要する費用は原告の負担とする旨を定めた。

(2) 右は、すべての保険料相当額を原価に算入した請負代金では、予算の都合がつかず調達できないという原告側の事情から、請負代金を節減するための合理的代替措置として新たに採用されたものであつた。

以上の事実によれば、原・被告は、当初においては損害の負担区分と付保につき、被告が損害を負担する場合には原告が保険料相当額を製造原価に算入するという型で負担し、原告が保険料を負担しないならば損害を原告が負担することを原則とし、契約上もこれを明定していたが、この相関関係の原則を変更したことも、この原則を維持することを許さない客観的事情が生じたことも、これを認めるに足りる証拠はないから、その後においても引続きこの原則を相互に了解したうえで契約を締結してきたものと推認することができる。そして付保した場合に保険事故が発生すれば、被告はその旨を主張立証して保険金の支払いを受けて原告に対する損害の負担に充当することができ、保険者においては、その免責事由である被告の故意又は重大な過失あることを立証しない限り、被告は現実の出捐を免れる関係にある。したがつて、原告が付保の代わりとして損害を負担することとした場合には、原告において被告の故意又は重大な過失あることを立証しない限り、被告は損害を負担すべきものではないという趣旨と解するのが相当である。

これを飛行保険についてみると、その保険料は他の保険と比べ著しく高額であることと、飛行試験においては事故発生の可能性が大きく、一旦事故が発生すれば、その損害額は請負契約における利益の数百倍にも達することがあり、事故原因の究明は著しく困難であるから、仮に被告が損害を負担することとされた場合には、被告としては右危険を付保によつて免れようとすることが合理的経営上当然であるということができ、この場合には被告にとつて前記の相関関係を維持する必要性がもつとも高いのであるから、その保険料を請負代価に算入せず、これを節約しうる原告において、試験飛行中の損害を原則として負担する旨の合意があつたものと推認することができ、この推認をくつがえすべき特段の事情の認められない本件請負契約においては、同様に解すべきものであり、飛行試験中の航空機に生じた損害の負担を定めた本件一般条項第二八条第三項は、被告において故意又は重大な過失があることの立証責任を原告に負担させる趣旨で定められていると認めるのが相当である。

三そこで、原告の再抗弁1について判断する。

ところで、被告は同1(二)の主張は時機に遅れた攻撃方法であると主張するが、本件審理の経緯に鑑みると、原告の右主張のため何ら新たな証拠調を必要とするものでもなく、またこの点についての証拠もすでに顕われているものであつて、被告に対する不意打ちのおそれもないものであるから、原告の右主張をもつて時機に遅れたものというにあたらない。

前示の請求原因3の事実と<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、他にこの認定に反する証拠はない。

1(一)  本件パイロツトは、昭和四二年一〇月一二日午前一〇時四九分燃料五〇〇〇LBSを搭載(チツプタンクは装着せず)し、本件航空機に搭乗して試験飛行のため名古屋空港を離陸し、予定項目の試験を終了して、同一一時一九分滑走路南端から着陸すべく名古屋管制塔へ着陸誘導管制を要求し、そのまま着陸体勢に入つて進行中、同二六分頃滑走路南端手前三マイルの地点において、同管制塔から「左側へ離脱せよ。」との指示を受け、一旦滑走路左側(西方)へ離脱した。同二七分頃滑走路北端から数マイル北西方の地点において、同管制塔に再度着陸を要求し、そのまま右方へおよそ三六〇度旋回して、再び滑走路南端上空に達し、着陸誘導方式によらない通常の着陸方式による着陸体勢に入り、その後同管制塔との交信を続けながら順調に進行し、同二九分四〇秒滑走路南端から北方へ四分の一の滑走路上において、同管制塔からの「ベースで報告せよ。」との指示に対し、同二九分四七秒「了解」と答えながら、滑走路中央上空において着陸のための本件旋回を右方へ開始した。

(二)  本件航空機は、本件旋回の旋回半径が通常の着陸前の旋回の場合により相当に小さく、おそくともその頃脚を出しており、同一一時三〇分頃約一八〇度旋回したところで不安定な状態となり、深いバンクの姿勢から急激に機首を下げてきりもみに入り、ほとんど垂直の姿勢で降下し始め、地面に近づくにつれて機首が上がり、機軸がほぼ水平に近い姿勢になつた時、バンク左約三〇度の状態で、滑走路から東方約一七〇〇ないし一八〇〇メートルの地点に激突した。

(三)  本件航空機の脚及び脚ドアは三脚とも脚下げの位置になつていたが、緊急脚下げの位置ではなく、フラツプは離陸、スピード・ブレーキは閉の位置にめり、本件航空機の破壊の状況から、フラツプの異常作動、エンジンの急激な推力低下はなく、試験飛行の内容及び過去の試験飛行の経験から、燃料の消費量は三六五〇LBSであり、本件旋回時の残量は一三五〇LBSとなり、本件航空機の総重量は一万五三一七ポンドであつたものと推定される。

(四)  本件航空機は、超音速戦斗機としての高性能の発揮に徹し、そのため音速以下の飛行操縦性をある程度犠牲にするとの方針がとられており、細長比の大きな胴体及び前縁の鋭い縦横比の小さな主翼をもち、水平尾翼が高い位置にあるため、ある迎え角以上になると静安定が負となる性質がとくに顕著で、急激な機首上げから操縦不能な不規則の荒い運動に陥るおそれがある。このため予め設定された迎え角及び縦揺れ角速度において、まず操縦桿を振動させ操縦者に警告を与え(この装置をシエーカーという)、さらにそれ以上の悪い状態になると強制的に操縦桿を前方に押して機首を押し下げ、自動的に機首上げを防止する(この装置をキツカーという)機構となつているが、キツカーは脚下げ状態では作動しない。なお脚下げ装置は独立のハンドルによつて操作されるようになつており、それを操作するには、ボタンを押して固定装置を外したうえ、ハンドルを押下げる機構となつているため、誤動する可能性が極めて低い。

(五)  技術指令書において、F一〇四J航空機を安全かつ効果的に運航するため操縦士が最少限遵守すべき基準が定められているが、同書等によれば、標準的着陸方式は、着陸のため水平旋回は一定の推力と六〇度のバンク角を保ち、ほぼ半円形を画いて一八〇度旋回した地点で機体を水平に復して直進したのち、さらに第二回目の旋回を行い最終進入点に入るのであるが、第一回の旋回を開始する場合の速度は三二五ノツト(防衛庁においては三〇〇ノツト)、機体を水平に復す地点では二六〇ノツトとされている。したがつて、その平均速度は約二九〇ノツトとなるから、その旋回半径は航空力学上約一三一〇メートルとなる。本件航空機は、前認定の本件旋回開始地点、墜落地点及び標準着陸方式にてらすと、その旋回半径は約八五〇ないし九〇〇メートルと考えられる。また旋回にあたつては右のように一定の推力とバンク角を保つことが通例であるから、これにより生ずる揚力の低下をさけるため迎え角を適宜大きくすることが必要である。

右事実によれば、本件パイロツトが左方へ一旦離脱した際あやまつて脚下げをしたまま旋回したこと、本件旋回の旋回半径が通常に比して相当に小さいことにてらし、本件旋回開始時の速度が規定の速度より低下していたこと、墜落直前までの管制塔との応答、墜落後の機体の状況から機体に異常がなかつたことが推認されるのであり、これらの事実から、本件パイロツトが左方へ離脱したのち、脚出しによる抗力の増加に見合う推力の増加を怠つたことにより、本件旋回開始時の速度が規定の速度より下廻り、本件旋回に伴い著しい速度の低下を来たしたため、突然機首上げを起こし、キツカーの不作動もあいまつて本件事故を惹起したものと認められる。

2  <証拠>によれば、脚出しは旋回中の航空機に対する抗力を増加するものではないことが認められるが、ことは本件旋回開始前における抗力の増加による旋回開始時の速度に及ぼす影響はどうかという点であるから、右事実は、前記認定と抵触するものではない。

3(一)  被告は、本件パイロツトに何らかの生理的異変が生じたと主張し、本件航空機のようなジエツト機の操縦士は条件の不安定な上空で複雑な計器を駆使し秒単位の行動を強いられることは容易に推認しうるけれども本件パイロツトの生理的現象に急変があつたと認めるに足りる証拠はない。

(二)  次に、被告は、本件航空機は本件旋回の途中でコンプレツサー・ストールを起こしたと主張し、証人岸通雄の証言によると、本件事故の際、数名が「パツパツパ」あるいは「ドドツ」というような異音を聞いたことを認めることができる。しかしながら、<証拠>によると、F―一〇四J航空機は、コンプレツサー・ストールをできる限り生じないようにエンジンに可変式防止装置が設けられており、コンプレツサー・ストールの生じにくい機種であること、それにもかかわらず、同機にコンプレツサー・ストールが生じたときには、ドオン又はポンという音を発するのが通常であること、本件航空機は一旦コンプレツサー・ストールを生ずると、エンジンの回転を停止してなす回復操作をして回復をえるまでには一〇数秒間必要であり、前示のとおり本件パイロツトの名古屋管制塔との最後の交信から墜落するまでには約一三秒間ほどしかなかつたもので、仮にコンプレツサー・ストールが発生したとすれば、墜落までの時間はもつと短く、エンジンを始動させるための回復操作を試みるのは全く無益であるので、速やかに座席射出(エジエクシヨン)の措置をとるべきであるのに、本件パイロツトはかような措置をとらなかつたことを認めることができ、右事実に照らすと、前記認定の事実から直ちにコンプレツサー・ストールが発生したものと推認するに足りず、他にこの点に関する被告の主張事実を認めるに足りる証拠はない。

4  よつて、前示1のとおり、本件事故は、本件パイロツトが脚上げを忘れ、かつ脚出しに伴う抗力の増加に見合う推力の増加を怠つたため、本件旋回開始時の速度が相当低かつたことに起因するものであり、本件航空機の前記の特性に鑑み、右の過誤は基本的事項にかかわるものであるから重大な過失にあたるというべきであり、被告は、自己の履行補助者である本件パイロツトの右所為により生じた損害を賠償すべき義務がある。

四<証拠>によると、請求原因4の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

五1  請求原因5(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  被告は、本件一般条項第二六条第三項により自己は本件航空機に対する修理作業義務を免れたから、もはや右の特約にいう「この契約の全部又は一部を履行する見込がない」場合には該当しないと主張するが、同条項は、被告に故意又は重大な過失がない場合に関する規定であるところ、本件事故の発生につき被告に重大な過失があつたことは前示のとおりであるから、被告の右主張はその前提を欠き失当である。

2  請求原因5(二)、6の事実は当事者間に争いがない。

六以上の次第により、被告は、原告に対し、本件履行不能による損害賠償として金二億一〇六〇万七三四三円、違約金として解除にかかる請負代金の一〇〇分の一〇相当の金一一五万一九〇〇円(合計金二億一一七五万九二四三円)及びこれに対する支払期日の翌日である昭和四七年九月一日から完済まで日歩金二銭四厘の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるというべきであり、原告の本訴請求は全部理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

仮執行宣言は相当でないからこれを付さない。

(丹野達 榎本克巳 増田芳子)

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